
以前の投稿では「不動産投資にとって銀行は非常に大事なパートナー」というのを記載しました。
では、具体的にどういう点を銀行は見ているの!?
法人の何が重視されるの!?
などを某地銀銀行員にインタビューした内容をまとめました!
このページで学べること
- 継続して融資を引くための決算書とは?
- 銀行員は決算書のココを見ている!
- 良くしていかなければいけない決算項目
- 良くするために改善すること
不動産投資は賃貸事業|継続して融資を引くための決算書の基準
不動産投資は賃貸事業。
不動産投資において、繰り返し不動産投資を行っていくには、よほど自己資金が充実していない限りは継続して銀行から融資を引き出すしかありません。
不動産投資は賃貸事業に該当するため、決算書の中身が審査では非常に重要になります。
銀行から融資を受けるための決算書とはどのようなポイントなのでしょうか?
某地銀の銀行員をインタビューしました。
結論、審査では損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)を主に確認されます。
損益計算書(P/L)
損益計算書(P/L)とは、「いくらの売上があり、いくらの利益が出ているか」という1年間の収益を計算するための決算書類です。
不動産賃貸業の場合、「家賃収入がいくら」で「経費がいくら」そして利益がいくらになるのかということを確認されています。
当然ながら黒字の方が融資を受けやすいですし、継続的に赤字が続いている場合には審査に通過することが難しくなります。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表(B/S)とは、会社の資産・負債を全て網羅した会社の財務状態を現した決算書類です。
貸借対照表で確認されることは
・自己資本がどの程度あるか
・資産の中身に問題がないか
・おかしな負債がないか
という点です。
銀行員は不動産賃貸業決算書のココを基準に見ている
銀行員は不動産賃貸業の決算書について以下の5点を重点的に確認しています。
- 継続的な家賃収入があるか
- 償還財源があるか
- 資産の中身
- 自己資本比率
- 負債の中身
決算書で重要視される2つのポイントについて詳しく解説していきます。
継続的な家賃収入があるか
銀行融資の際には過去3年分の決算書を提出することが一般的です。
この際に、毎年の家賃収入が安定しているかどうかという点が重視されます。
不動産投資融資は返済期間が長期にわたるので、「今後も継続的に家賃収入が得られるかどうか」という点は審査で非常に重視されます。
過去3年間、家賃収入が安定しているのであれば、今後も安定的に家賃収入が得られると判断できるため、審査ではプラスです。
反対に、家賃収入が落ち込んでいるのであれば「将来的に返済できない可能性がある」と判断されるので審査ではマイナスになります。
一般的に入居率は「90%を超えておきたい」というのは1つの目安です。
前年は90%超えだったのにも関わらず、当年は90%を切ってしまい、来期も空室率の歯止めがかからないような場合には、銀行から注意してチェックされる可能性があります。
償還財源があるか
銀行にとって、融資を実行できるかどうかは「その会社が融資金を返済できるかどうか」に左右されます。
「返済できるかどうか」を確認するための指標が償還財源です。
償還財源は以下の式で算出します。
『償還財源=当期利益+減価償却費』
実際には現金が流出しない費用である減価償却費と利益を足したものが償還財源になります。
償還財源が借入金の年間返済額以上なければ融資を受けることは難しいでしょう。
資産の中身
貸借対照表に計上してされている土地の価格は取得時点の価格です。
そのため、2,000万円で取得した土地の市場価格が1,000万円になっているのであれば、その企業は1,000万円の損失を抱えることとなります。
銀行は審査で「資産の真の価値」を確認します。
また、建物に関しては効率的な投資を行っているかどうかも確認されます。
例えば中古の木造住宅などを購入した場合には、4年で価値はほぼゼロになってしまいます。
しかし、この住宅を購入するための借入金が残っているのであれば、効率的な投資を行ったとは判断できません。
このように、資産については「本当の価値はどのくらいか」「借入金に見合った資産を取得しているか」ということを確認されます。
自己資本比率
不動産賃貸業は借入とは切っても切れないため、どうしても借入金が多くなってしまいます。
この点は銀行員も理解していますが、決算書の見栄えをよくした方が審査に通過しやすいことは間違いありません。
そのため、少しでも多く自己資本を厚くして自己資本比率を高めておく必要があります。
また、資産の中身も確認されます。
一般の企業で「及第点」と判断される自己資本比率は20%と言われています。
不動産賃貸業においては10%程度でも「問題ない」と判断される可能性はありますが、20%を目指して経営していくべきでしょう。
負債の中身
負債の中に以下のようなおかしな借入金がないということもとても重要になります。
・役員借入金
・銀行以外の貸金業者等からの借入金
・債務償還年数は20年以内か
役員個人からの借入金があるとあまり印象はよくありません。
「実質的な資本金」とポジティブに判断してくれる金融機関もありますが、やはり会社と経営者個人の財布が一体化していることは良いこととは言えないので、役員借入金はない方がよいでしょう。
※役員借入金についてはインタビューの結果このような話がありましたが、金融庁検査マニュアルには「役員借入金は資本金とみなす」と記載されているため、決算期前に僕は自己資本比率を上げるために貸付金を法人口座にいつも突っ込んでます 笑
また、銀行以外の消費者金融などからの借入がある場合には審査には確実にマイナスになります。
銀行は「消費者金融から借入をするということはよほど資金繰りが苦しい」と、ネガティブに判断する傾向にあります。
最後に、負債をどの程度の年数で返済することができるのか、という指標である債務償還年数も非常に重要です。
債務償還年数=(有利子負債-現金)÷(税引後利益+減価償却)
で計算される指標です。
不動産賃貸業の場合には、債務償還年数は20年以内とした方が「健全な不動産投資ができている」と判断されます。
良くしていかなければいけない決算項目とその基準
継続的に銀行から融資を引き出すために、常に改善を心がけなければならない決算項目は以下の4点です。
- 営業損益
- 減価償却費の計上
- 家賃収入の維持
- 自己資本を充実させる
不動産賃貸業が重視される4つの決算項目を詳しく見ていきます。
営業損益
営業損益とは、本業でいくら儲かったのかを示す指標です。
不動産賃貸業においては「家賃収入−経費」で営業損益を求めることができます。
不動産賃貸業は他の業種と比較して経費がかからず運転資金がほとんど必要のない業種ですので、営業損益が赤字であれば、まず融資を引くことはできません。
家賃収入が上がらないのであれば、経費を圧縮して、必ず営業黒字となるようにしましょう。
減価償却費の計上
不動産賃貸業は不動産を所有しているのですから、建物に関しては、あらかじめ決められた耐用年数で残存価格となるよう、毎年減価償却を行い、建物の価値を減価させていかなければなりません。
減価償却をルール通りに行わないと、「実際に価値よりも高く資産の価格を計上している」「黒字に見せるために減価償却を怠っている」と判断されてしまいます。
減価償却はしっかりとルール通りに行いましょう。
家賃収入の維持
継続的に売上を確保していくためには、家賃収入を維持して行くことが非常に重要です。
空き部屋を作らない、家賃の安易な引き下げは行わないなどして、なんとか売上が減少しないように努めましょう。
自己資本を充実させる
不動産賃貸業は借入金が多い業種ですので、どうしても自己資本比率が他の業種と比較して低くなります。
金融機関からの評価を高め、融資を引きやすくするためには自己資本比率を少しでも高めるに越したことはありません。
利益を出し続けることはもちろん、経営者個人の資産を増資するなどして、自己資本比率を日頃から高める努力をした方がよいでしょう。
それらの項目をよくするために日々の業務で改善すること
継続的に銀行融資を引き出すために、不動産賃貸業は以下の3点を日常的に注意する必要があります。
- 空き部屋が出たら可及的速やかに空き部屋を埋める
- 不要な経費等をかけずに営業利益を確保する
- 優良物件を揃えて銀行の保全を高めておく
継続的な融資のために注意すべき3つのことについて詳しく解説していきます。
空き部屋が出たら可及的速やかに空き部屋を埋める
不動産賃貸業は家賃収入が売上の全てと言っても過言ではありません。
空き部屋が出たら放置するのではなく、広告を出すなどの方法でとにかく全体の家賃収入が減少しないように努めましょう。
不要な経費等をかけずに営業利益を確保する
人件費・広告費・家賃・水道光熱費などの不要な経費を日頃からできる限り抑えておくことが非常に重要です。
不動産賃貸業は営業赤字になってしまうと、まず融資を引くことは難しくなります。
極端に言えば、事務所や従業員を持たずに、経費を一切かけなければ営業赤字になることを防ぐことは簡単です。
家賃収入が下がった時でも営業赤字にならないよう、日頃からできる限り経費をかけないよう経営しましょう。
優良物件を揃えて銀行の保全を高めておく
銀行融資を引くためには、銀行に優良な担保を提供することも非常に有効なテクニックです。
担保価値のある優良な不動産を揃えておけば、当該不動産を担保に銀行から融資を受けやすくなります。
耐用年数の短い木造などの劣悪な物件ではなく、耐用年数の長い物件を意識して購入することによって、その不動産を担保に継続的に銀行から融資を受けやすくすることが可能です。